私は 昨年(2009年)6月2日の板橋区議会本会議での一般質問で「子どもの貧困」問題をとりあげました。
質問の内容と、区長と教育長の答弁を紹介します。
松崎いたる
次に、「子どもの貧困」についてです。
区長はさきの定例会において、今日の「貧困の問題」は「社会経済状況、雇用環境、社会保障制度など、さまざまな要因がかかわっている」と述べ、また、区としても「関連機関と連携して区民生活を支援し、対応していく」と表明しました。この認識の上に立って、具体的に「何をなすべきか」が求められます。
特に今、貧困の犠牲者としての子どもの問題がクローズアップされています。経済協力開発機構によれば、我が国では平均的な所得の半分以下の家庭で暮らす子どもの割合、いわゆる「子どもの貧困率」が14%にも上ります。
日本共産党が昨年実施した区民アンケートには、子育て中の親たちから経済的苦境を訴える声が多く寄せられました。
「貧乏になれてしまい、いろいろ考えるのが疲れてきました。子どもを1人育てるにはお金が幾らかかるのかという計算をしてしまう。教育を受ける権利が保障されていない」
「小・中までは支援の制度があるが、子どもが高校・大学となると不安です。授業料が高いと通わせたくても通えなくなる。生活が厳しい」
――こうした声にも示されるように、子どもの貧困は板橋区でも例外ではありません。
区長は「子どもの貧困」という問題をどうとらえていますか。また、家庭の経済状況にかかわりなく、どの子にも十分な成長・発達、教育を受ける権利を保障するために、区は何をなすべきと考えていますか。お答えください。
教育費負担については、国においても新たな動きが始まっています。
文部科学省の有識者懇談会が、去る5月25日、都内で初会合を開き、授業料減免や奨学金の拡充など、教育費の負担軽減策の検討を始めています。
この会合では「多額の教育費が低所得者層の家計を直撃している」「教育への公的支出の少なさが家計を圧迫している。金のことを心配せずに学べる環境づくりが必要だ」など、公的な財政支援の拡充を求める意見が相次いだといいます。
文部科学大臣も、「厳しい経済情勢の中、家庭の経済力によって教育の機会が失われてはならない」と述べています。
教育長は、教育費負担についてのこうした国における議論をどう見ていますか。
また、この機運をとらえて、国の施策待ちとならずに、板橋区独自、あるいは東京都と協力して、奨学金制度の拡充や教育費の負担軽減策を打ち出すべきだと思いますが、いかがでしょうか。
区立学校における教材等の私費負担の軽減については、区教育委員会の判断で、すぐにでも実施できることです。
私費負担について学校ごとに「決める」ことになっていますが、これでは負担を抑制する仕組みとしては不十分です。
各学校にすべて任せるのではなく、教育委員会としても私費負担のあり方を見直し、負担を減じるための方策を検討すべきだと思いますが、いかがですか。
より具体的な課題として、家庭科での実習、遠足、社会科見学などが現在、個人に「利益が還元される」として私費負担にされていますが、これらは個人に選択の余地がなく、原則、全員参加であるからこそ、その教育的効果が期待できるのであり、利益は参加した児童・生徒全員のものです。
また、これらはどの学校でも共通しており、その費用を公費負担にしても、学校の独自性を損なうことにもなりません。
せめて家庭科での実習、遠足、社会科見学などは公費負担にすることを求めます。
区長の答弁
子どもの貧困の問題についてのご質問であります。
家庭の経済状況により、子どもの健全な成長が保障されず、そのことによって貧困の再生産が繰り返されることがあってはならないと考えております。
とりわけ子どもの教育を受ける権利を保障していくため、区の奨学金制度や、国や都、日本学生支援機構等の奨学金制度のほか、生活保護世帯に向け、次世代育成支援事業など、これらの制度の活用を図っていくものであります。
続いて、奨学金制度の拡充についてのご質問であります。
区の奨学資金貸付制度の私立高校入学準備金につきましては、前年度より9万円から20万円に引き上げるなど、制度の拡充を図ったところであります。
また、前年度より東京都からの委託事業として、中学3年生、高校3年生を対象とした学習塾等の受講料、及び大学等の受験料を貸し付ける生活安定応援事業のチャレンジ支援貸付を実施をしているところであります。
板橋区では、都内で最も多くの方が、この貸付制度を活用され、そのうちのほとんどの方が償還免除となる見込みでありまして、教育費の負担軽減にもつながっているものと考えております。
教育長の答弁
子どもの貧困について、国の有識者懇談会の論議についてのご質問でございます。
教育を受ける環境は、どの地域に住もうとも等しいことが望ましいと思います。自治体の財政力の差によって公的負担の優劣があってはならず、第一義的には国による財政支援の充実が必要であると考えております。
教育費の負担軽減につきましては、今年度から、食材価格の高騰を受けまして、緊急経済対策として、区が米を購入することにより、給食費会計に公費を投入して保護者負担の軽減を図っているところです。
また、就学援助の認定基準も23区で最も高い水準にある中で、今後も状況に応じた保護者負担の軽減措置を適切に行ってまいりたいと思います。
私費負担軽減の具体的な対策についてでございますが、私費負担の軽減につきましては、常々、校長会などを通して、そのあり方を見直しするように指示をしているところでございますが、教材などの選定は各学校が実情に応じて決定をしております。
教育委員会が一律の枠を設定して削減を指示することは、現状になじまないものと考えているところです。
また、実習、遠足等の費用の公費負担についてのご質問でございます。
教育費負担の軽減のため、所得が低い世帯に向けては、就学援助制度を適用することにより、遠足代、学用品費などを公費負担により助成をしておりまして、認定基準は23区でも高い水準でございます。
また、人数などによって保護者負担に大きな変化が生じる可能性のある社会科見学や移動教室のバス代等の一部につきましては、既に公費により対応しているところでございます。