3月1日、議案「東京都板橋区職員定数条例の一部を改正する条例案」に反対する討論をおこないました。
討論の内容は以下のとおりです。
毎年この時期には職員定数改定がおこなわれますが今回の改定もまた職員数を削減するものです。職員削減は平成13年以降13年連続で、10年前に比べ795人も削減されています。
今回の削減は全体では総数を3556人とし、昨年に比べ16人削減ですが、けっして「小幅な削減」ではありません。
減った人数と増えた人数を比較すれば、60人も削減されており、これを増員44人と差引した結果が「16人」という削減数です。
現場で実際に公務をこなしている職員の団体からは100名以上の増員が必要との提言もだされており、今回の定数改定は職場の実態からもかい離しているといえます。
増員となったは福祉事務所ですが、これは急増する生活保護受給世帯に対応するもので、職員の増員そのものは当然のことです。
減員となった部署で目立つのは子どもや教育に関わる職場です。子ども家庭部では学童クラブの委託化など、合計17人も減らされています。学校関係では給食調理、用務の委託化で10人の削減です。
未来創造などといいながら、未来ある子どもたちを狙い撃ちにしたような職員削減となっており、これでは板橋の未来喪失です。
職場の実態も、区民のニーズもかえりみないまま、際限のない職員削減をおこなっている結果がどうなっているか。その検証なしに、板橋区の未来創造はありません。
問題のひとつは、職員の意欲・モチベーションに否定的な影響を与えていることです。管理職昇任試験を受ける職員が激減していますが、「なぜ管理職をさけるのか」という人事課のアンケート調査では、多くの職員が「責任が重くなるから」と答えています。
職員削減によって「少数精鋭」が残ったはずの職場で、管理職のなり手のない事態は、一人ひとりの資質の問題では説明がつきません。
なかでも長期病気休職中の職員が24人もおり、その7割の17人がうつ病などのメンタル系の病気であることは、真剣に考えなければならない問題です。当然、仕事と病気との関係が疑われるべきなのに、そうした職場環境における原因究明もせず、予防対策も確立していないのに、職員削減を強行するなど許されません。
一人の責任を重くするのではなく、職員集団として責任を分かち合い、お互いに励まし合い、協力・共同できる職場環境をつくってこそ、一人ひとりの職員が持つ意識と能力、区民に対する「おもてなし」の心を実際の職務に活かす道です。
定数減は意欲だけでなく、具体的な仕事の内容や仕事量の面でも悪い影響を及ぼしており、肝心の区民サービスをも劣化させています。
「定数をへらした分は、業務の民間委託や民間開放によって補う」と説明されていますが、そもそも公務員と民間では、同じ仕事のように見えても、その職務の性質はまったく違うものです。
日本国憲法に宣誓し、全体の奉仕者として公務を遂行する義務をおう公務員を、区民の頼もしい味方として確保し、育成することこそ自治体経営の基本にすえるべきです。
たとえば現在、区では、大災害発生時のBCP=業務継続計画を策定中ですが、民間の指定管理者が運営している公共施設において、非常の際、必要な人員を確保できない問題が表面化しています。公務員には、災害時でも全体への奉仕者として役割が期待されますが、民間人に同じような命令はできないのです。
また、職員削減のなかで退職不補充と再任用化のますますの進行が常態化していますが、このことにより各職場の高齢化が進んでいることにも注視すべきです。
再任用職員は労働時間にも制約があります。そのため、公園事務所、土木事務所など、いわゆる現業系の職場を中心に、必要な仕事量をこなせないという困難が生じています。
もちろんベテラン職員の活用は、技術や職務経験の次世代への継承など、積極的意義があり、重要なことです。しかし同時に、若い世代を職場に入れなければ、貴重な経験の継承は望むべくもなく、結局、職員の経験・努力が区民サービスに活かされないことになります。退職不補充は「持続可能な発展」とは正反対に、日常業務すらも継続できない衰退をもたらしているのです。
土木事務所おいて全部民間委託の方針が改められましたことは、その仕事の公共としての重要性から当然ですが、退職不補充と再任用の拡大の方針も、根本的に見直すべきです。
以上のべてきたとおり、今回の職員定数の改定は、全体を通してみれば、職員数の削減によって板橋区役所という職場が抱える問題をいっそう悪化させ、それは区民サービスの悪化を引き起こすものです。
職員削減は撤回し、区民のくらし、福祉、教育、防災などの願いを実現させるため必要な人員の持続的確保を求めて、本条例案に対する反対討論を終わります。
土木・公園事務所の職員年齢構成