10月16日、板橋区議会本会議でつぎの討論をおこないました。
「4月からの消費税増税中止を」の声を板橋区から
2013年10月14日
日本共産党板橋区議団 松﨑いたる
これより、陳情第84号「国に対し『消費税増税中止を求める意見書』の提出を求める陳情」の採択を求め、討論を行います。
この陳情は、いまだ「景気回復」が実感できず、雇用情勢も個人消費の落ち込みもたいへんきびしい現状のもとで、消費税率を引き上げれば、区民のくらしや区内経済、区財政に深刻な打撃となることから、政府に対し「消費税増税中止を求める意見書」の提出を求めるものです。
景気はどうなっているのか?
安倍首相は10月1日、来年4月からの消費税税率を8%に引き上げると表明しました。
安倍首相は会見で、日本経済について「回復の兆しを見せている」ことを消費税増税の根拠としました。しかし、同じ日に発表された政府の経済指標でも、雇用も賃金も消費も、軒並み悪化し、日本国民の生活実態は「回復」からかけ離れた状況にあることを示しています。
現在の完全失業者数は全国で271万人、完全失業率は4.1%といぜんとして深刻な状況が続いています。【総務省統計局は10月1日、平成25年8月分の完全失業率等の指標を取りまとめた、労働力調査結果を公表した】
働く人の月給が15カ月連続で減り続けるなど、賃金アップの兆しすら見えません。
年金生活者にとっても、この10月からは年金支給額が1%引き下げられました。さらに政府はこの先、3段階にわけて2・5%の年金削減を行おうとしています。
消費の落ち込みも止まっていません。
小麦や食用油に加え、10月からはさらに牛乳、大豆、ごま油などの出荷価格が引き上げられました。家庭用の電気・ガス料金も高止まりしています。
こうした中で、所得の増えていない消費者は買い控えをせざるを得ず、中小零細の経営者は仕入れ値、原材料の高騰に、ただでさえわずかな利益を縮小するという「身を削って」の対処をしている状況です。
坂本区長も先日の本会議で「区内中小企業を取り巻く状況はいぜんとして厳しいと認識している」と答弁しています。
この上さらに消費税増税となれば、くらしと景気への大打撃となることは必至です。
5兆円の景気対策は有効か?
安倍首相自身も消費税増税で深刻な景気悪化が起きることを認め、そのために、年末に決定する復興特別法人税の廃止を含めると6兆円規模の「経済対策」を行うことを表明しています。
しかしそもそも、国民に8兆円もの大増税を課し、景気を悪化させる一方で、利潤をあげ、内部留保もある大企業に対して「景気対策」として6兆円もばらまくというのは、支離滅裂だと言わざるをえません。
安倍首相は大企業減税について「大企業がうるおえば、賃金があがる」などと説明していますが、これもとんでもないごまかしです。
1997年以降に法人税減税がくりかえされてきました。しかし大企業の内部留保は100兆円以上も増えていますが、労働者の賃金は減りつづけてきました。
安倍首相は賃金上昇については「経営者の理解をもとめる」といいますが、日経産業新聞9月24日付けの「社長100人アンケート」によると、安倍政権が賃上げを要請した場合の対応について「当面、賃上げには応じられない」との回答が13・0%にのぼり、「賃金の引き上げを検討する」との回答はわずか2・7%にすぎませんでした。賃上げに「応じられない」とした企業は、「検討する」企業の約5倍に達しています。
いまも経営者からは「減税と賃上げは別問題」との声が聞かれる状況です。
結局、消費税の増税分は大企業減税の穴埋めにつかわれるだけです。
しかも、国民が納める所得税の復興増税は25年も続けるのに、法人税の復興増税は1年前倒しで中止しようとしています。これに対し、被災地をはじめ、多くの国民から怒りの声が上がっているのも当然です。
財政再建と両立するのか?
安倍首相は「経済再生と財政健全化を両立」するともいいますが、消費税増税は財政にとっても逆効果です。
かつて、消費税を3%から5%に増税したときも、消費が落ち込み、大企業減税もかさなったため、国の税収が14兆円も減ったというのが歴史の真実です。
板橋区財政にとっても、そのマイナスの影響を避けられません。
区は企画総務委員会の質疑のなかで、増税の初年度には地方消費税交付金の増額分が14億円見込まれるものの、支払うべき消費税も16億円も負担増となり、差し引き2億円減収となることを認めながら、2年目以降は「増税となり、区財政への打撃にならない。むしろ安定した財源だ」とまで述べています。
しかしこれは、2015年10月以降に消費税率がさらに10%に引きあがることを見込んだ試算であり、増税によって区民の暮らしがますます困窮することを度外視したものでしかありません。
総務部長は「区において生活保護費を代表する社会保障費が非常に上がっている。これは、どこかで何らかの手立てをしなければ困る」「痛みの分かち合い」といって、消費税8%の国の方針に従うと言いました。
たしかに 生活困窮者が急増しており、その解決は板橋区政の最大の課題です。
しかし、そうした区民の暮らしの実態をかえりみることなく、生活に困っている区民からも容赦なく吸い上げるしくみを「安定した財源」と捉える姿勢は行政として本末転倒しています。
税のしくみは本来、痛みを分かち合うのではなく、社会の富の分かち合うものです。
生活保護費が足りないから生活保護を受けている人にも消費税の負担を増やすというのでは、何の保護にも、保障にもなっていません。
富の再配分機能という近代税制の原則に反する消費税は、社会保障の財源としても、いちばんふさわしくありません。
崩れた「社会保障のため」という口実
そもそも「社会保障のため」という口実そのものも崩壊しています。
安倍政権のもとで、充実どころか、介護も医療も年金も、負担増と切り下げ計画が目白押しです。板橋区でも、来年4月から保育園の保育料が値上げ、高齢者福祉の事業も軒並み削減されようとしています。
すでに負担を増やし、給付は削減しておきながら、「社会保障の財源にする」というのはスジが通りません。しかも与党議員の発言にあったように「お金には色がついていません」。いくら「総理は使い道を社会保障に限定すると約束した」と言っても、裏書のない空手形にすぎないのです。
低所得者対策なるものも、その有効性はまったく不透明です。かりに1万円の現金給付が行われたとしても、一回限りの給付では、永続する消費税の負担に対しては「気休め」以上の効果は期待できません。これは過去の「地域振興券」の経験からも明らかです。
それでも政府が低所得者対策を言明せざるを得ないのは、消費税がもともと、所得の少ない人ほど負担が重くなる「逆累進」という欠陥があり、最悪の不公平税制だからです。
消費税増税に代わる道こそ
真に、社会保障の財源をつくり、くらしを支える経済対策をすすめるならば、消費税増税にたよらない道をすすむべきです。
まずもって、4月からの消費税増税を中止すること。そして、内需と消費を活性化させるためにも、暮らしの安心、雇用と賃上げをつくりだすことです。そのための財源対策は、税金の無駄遣いをとことんなくすが不可欠であり、活力のある大企業にも応分の負担を求めることこそ必要です。
4月からの増税中止の一点で
安倍首相が増税表明をする直前の9月末、「日本経済新聞」がおこなった世論調査でも、来年4月からの消費税増税に「賛成」が47%、「反対」が48%と拮抗したままでした。他の世論調査でも国民の多数が増税に納得しているとはとてもいえません。
このまま消費税増税を強行することは「同意なくして課税なし」という民主主義の根本をも破壊するものです。
以上述べた理由から、板橋区議会としても、板橋区民の暮らしの実態をふまえ、「消費税増税は行うべきではない」という区民の声を政府につきつけるべきことを申し上げ、私の討論を終わります。