8月19日の板橋区議会区民環境委員会では「陳情 第111号 脱原発を求める意見書の提出を求める陳情」についての2回目の審議がおこなわれました。陳情そのものは、今回も「継続審査」となり、意見書提出にはなりませんでした。
前回6月10日の審議の際、自民党の安井一郎議員の“暴言”(下の写真)に反論をしなかったことを反省して、今回は準備をしたうえで、安井議員に発言の撤回を求めました。安井議員は発言撤回を拒否し、開きなおりの態度に終始しました。
原発の早期再稼働を主張している自民党議員が、放射線の健康への影響を軽く評価するばかりか、そのために実際に亡くなった方まで事実をゆがめ貶めていることはぜったいに許せません。
こうした妄言を許してはならないことを、広く世論に訴えていきたいと思います。
●松崎いたる
議会は議員それぞれが意見を述べることが大事ですが、安井議員の発言には、(言論の自由を)超える問題発言がありました。
ひとつは、“板橋区内に放射性廃棄物の処理施設をつくってもいい。それをやればお金がもらえる。医療費がタダになるぐらいのお金がもらえるのだから、区内に放射性廃棄物の処理場をつくってもいい”という発言です。
これは、板橋区民を危険にさらす発言ですし、「お金がもらえる」という発言も、石原伸晃大臣が「あとは金目でしょ」と発言し大きな問題になりましたが、非常に問題です。
もう一つ、第五福竜丸が被ばくしたビキニ事件についても、亡くなられた久保山愛吉さんの死因が放射線障害ではなく“売血による肝炎ウイルスの感染症だった”という発言もありました。
これも、故人をたいへん愚弄するもので、単なる見解の相違ではすまされない発言です。
久保山さんはビキニ事件から半年たって肝炎で亡くなっていますが、劇症肝炎でした。劇症肝炎はウイルス性で起こることは極めてまれです。
安井議員は“船員さんが血を売って生活していた”という発言もしていますが、これも故人に対してきわめて不適切な発言です。
当時から、輸血による影響ではないか? という話はありましたが、これは本人が売血をした結果ということとはまったく違う。故人が生活のために血を売っていたかのようにとられる発言は、議会として訂正すべきです。
●安井一郎議員
板橋区に処理施設を持ってきたら…という話はたしかに私もしました。それは、いま国が地方公共団体、いろんなところに候補地を探している時点での話の「例え話」という話のところでお話ししたと思います。
それから、ビキニ環礁で亡くなられた方のことは、いまの医学いろいろで、松崎副委員長もおっしゃっていましたけれど、きわめてまれな劇症肝炎で亡くなる、これはその因果関係をどうして証明できるのか、はっきりおっしゃってから、私が亡くなられた方の名誉を傷つけているという、船員さんのすべての人たちのその根拠をまずお示しいただきたいと思います。
●松崎いたる
第五福竜丸で亡くなられた久保山愛吉さんの直接の死因は多臓器不全と当時発表されています。その中で肝臓の障害が一番大きな死因ということですが、多臓器不全の中には、たとえば骨髄やリンパ節の変化ということがあります。また、精巣細胞の障害も見られています。
そのような精巣に障害をうけるとか、骨髄やリンパ節にまで影響を及ぼすというのは、輸血による細菌感染ではとうてい説明ができないということが一点です。
また、輸血による感染ですと劇症肝炎にはならない。たとえばC型肝炎ではまったく劇症肝炎にならないといわれています。可能性があるのはB型肝炎のウイルスですが、これも劇症になるのは、発生率わずか1パーセントですので、そういった意味で「きわめてまれ」なわけです。
それを、たまたま久保山さんわずか1パーセントの偶然に当たったというのであれば、逆にその根拠を示していただかなければ、「売血による輸血が原因だ」という特定はできないはずです。
第五福竜丸がビキニ環礁で死の灰を受けたことは、当時の日米の調査機関でもはっきりしている事実ですから、その影響を考えずに「売血の影響だ」というほうが逆に無理な話です。
しかも安井議員は「船員さん」という言い方で、久保山さん自身が血を売って生活を立てていたという発言もしていますが、なんら確証もなく、いくら60年前の話だからといって、遺族のいるなかで、議会でそうした話をされるのは極めて不適切です。
当時から輸血の影響というのは検討されていました。肝臓障害には新しい血液を入れるという医療方法が多くとられていた。その輸血の中には売血による安全度の確かめられていない血も混ざっていたという当時の状況もありました。そのため感染症というのは当時から疑われていましたが、それは久保山さん自身が血を売っていたという話とはまったく別の話ですから、その部分でも、亡くなった方を傷つける発言だったと思います。
●安井一郎議員
根拠がないとおしゃっていますけれど、私もそれなりの調査をして、第五福竜丸の久保山愛吉さん、当時、売血そのものは非合法でも何でもなかった時代の生活の糧であったという事実も承知している。その上でこの発言をさせていただきましたので、なんら撤回するつもりはございません。