2013年4月13日の土曜日、加賀1丁目において小学2年生の男子児童が誤って約10メートル下の石神井川底のコンクリート部分に転落し、死亡するというたいへん痛ましい事故が発生しました。
犠牲者が出てからでの対策では「遅きに失した」との非難は免れません。しかし事故がおきた以上、再発をなんとしてふせがなければなりません。
現場よりかなり上流ですが、私も石神井川沿いに住んでいます。事故の報をきいてまず最初に思ったのは、「高い柵があるのに、どうして乗り越えてしまったのか」ということです。
その疑問は事故現場に行ってみて、すぐに解けました。
事故現場にも転落防止用の高さ110センチの防護柵が設置されていましたが、その柵には地上から50センチのところに、ちょうど子どもが足をかけやすい横桟(よこさん)がある構造になっています。
私が住んでいる大谷口のあたりでは防護柵に横桟はありません。
転落したお子さんは「この横桟に足をかけたのだ」とつよく推定できました。逆にいえば、高さ50センチのところに足をかける場がなければ、110センチもある柵は容易にのりこえられないはずです。
現場の防護柵は河川法などで定められている安全基準である高さ110センチ以上という条件を満たしていました。この高さは成人男子の重心高さ等によって求めたもので、歩行者等の転落を確実に防止できるとされる基準です。
それにもかかわらず、身長の低い児童が防護柵を乗り越えてしまいました。法律上の基準は満たされていても、児童がこの防護柵を結果として乗り越えてしまった事実を、安全管理の責任がある板橋区は重く受け止めるべきです。
河川管理施設には適用されませんが、建築基準法でも建物の2階以上の高層にあるベランダ、バルコニーの手すり、柵の高さはやはり1メートル10センチと定めらています。
しかし、子どもの転落事故を防止するため、法の規定を上回る安全策として、足掛かりとなる横桟の設置はしないようにすることが建設業界では実践されています。
たとえば住宅金融支援機構は「賃貸住宅融資」の「工事内容確認チェックシート」のなかで、バルコニー等について、以下のような基準を示しています。
① 足がかりとなるおそれのある部分(横桟など。)の高さが650ミリメートル以上1,100ミリメートル未満の場合にあっては、床面から1,100ミリメートル以上の高さに達するように設けられていること。
② 横桟等の高さが300ミリメートル以上650ミリメートル未満の場合にあっては、横桟等から800ミリメートル以上の高さに達するように設けられていること。
③ 横桟等の高さが300ミリメートル未満の場合にあっては、床面から1,100ミリメートル以上の高さに達するように設けられていること。 現場の柵の横桟は500ミリメートルの高さですから、②に相当しますが、現場の場合、横桟からの高さは600ミリメートルしかありません。200ミリも足りないことになります。
石神井川の防護柵についても、これと同様な安全基準でつくられ、足がかりない構造、もしくは足がかりからの十分な高さがある構造ならば、事故はかなりの程度防げたのではないかと思います。
板橋区は石神井川の防護柵を総点検し、事故現場と同様に、足がかりとなるような横桟のある柵については早急に横桟のない安全なものと交換することが、必要だと強く感じています。
(2015年4月追記 この防護柵はその後、横桟のないものに変更されています)。