10月16日の板橋区議会本会議での、日本共産党・荒川なお議員の討論を紹介します。陳情は、共産、市民ネット、民主、無所属が賛成しましたが、自民、公明が反対し、反対多数で不採択となりました。
ただいまより日本共産党議員団を代表し、陳情第107号「集団的自衛権の行使を容認する解釈改憲変更に反対する意見書」に係る陳情について委員会決定、不採択に反対し討論をおこないます。
本陳情は板橋区議会が集団的自衛権の行使容認の憲法解釈変更に反対する趣旨の意見書をあげること求めるものです。
◎憲法が守ってきた国民の命と平和
そもそも集団的自衛権とは日本に対する武力攻撃がなくても、他国のために武力行使をするものであり、日本政府は、これまで半世紀以上に渡り、憲法上許されないとしてきたものです。
日本国憲法前文は「政府の行為によって再び戦争の惨禍が起こることのないようにすることを決意し」第9条は「国際紛争を解決する手段としては、武力による威嚇または武力の行使は、永久にこれを放棄する」と明記しています。その憲法のもとで戦後69年間、日本は他国の人を1人も殺さず日本国民も自衛隊員といえども戦争によって1人たりとも殺されてはこなかったのです。
世界で戦争しない国民としての信頼が築かれてきたのです。
◎戦争の口実になってきた「自衛」と「邦人救出」
委員会での陳情審議で今回の問題は「攻撃権ではなく自衛権」という意見がありましたが、とんでもないゴマカシです。
戦争はいつの時代も自存、自衛の戦争であったことを忘れてはなりません。日本が引き起こした日中戦争は「自存自衛」を掲げて行われアジアで2000万人、日本で300万人の命を奪うものになりました。だからこそ、この戦争の反省の上に立って、日本国憲法は集団的自衛権の行使を否定しているのです。
また在外邦人の救出のために必要という意見もありますが、これも過去において他国への侵略の口実とされてきたもので、そのまま鵜呑みにはできません。仮に、その必要があったとしても日本政府の責任で平和的に解決すべき問題です。
◎「新3要件」で武力行使は事実上無制限に
また今回の閣議決定について、委員会審議の中で「これまでの政府見解との整合性が保たれている」「問題ない」「行使の範囲が限定されている」という意見がありました。それは、9条の下での武力行使について新3要件が示されたからだとするものですが到底認められるものではありません。
なぜなら、これまでの政府見解は「武力行使が許されるのは我が国に対する急迫、不正の事態に対処する場合に限られる」としてきたものを今度は「恐れがある場合」と言い換えて武力行使の範囲を無制限に広げるものになっているからです。
安倍首相は7月の衆議院予算委員会で「集団的自衛権を行使する例として中東のホルムズ海峡閉鎖の場合を挙げ、「石油の供給がとどこおると日本経済に相当な打撃になる。」と答えています。「中東の石油のために血を流せ」というのでしょうか。
◎戦死者をうむ「戦闘地域」
また委員会審議では「解釈変更は戦地に送るのではありません。」という意見が出されました。しかし閣議決定は「戦闘地域にはいかない」「武力行使はしない」という歯止めが外されています。従来の非戦闘地域という考え方はやめて、自衛隊の活動範囲を戦闘地域にまで拡大しました。
政府は、状況の変化によって自衛隊のいる場所が現に戦闘行為をおこなっている現場となる場合には、ただちに支援活動を休止または中断すると言っています。
しかし、弾丸が飛び交う中で逃げ出すことができるでしょうか?
後方支援の現場こそが最も戦闘行為のおこなわれる可能性が高い場所です。武器などを供給する行為そのものが相手の攻撃の対象となり、攻撃されれば武器を持って応戦をする事態にならざるをえません。
2001年のアフガニスタン戦争ではそのような地域で活動していたイギリス、カナダ、フランス、ドイツなどの人たちに大きな犠牲が出ています。犠牲者は21か国で1031人にのぼります。
しかも現在、政府は日米軍事協力のガイドラインの協議をすすめています。その中身は閣議決定を反映させるとして、これまでの周辺事態という概念をなくし、地理的な制約を取り払い、後方地域という概念をなくし「戦闘地域」での米軍支援に道を開いています。
安倍政権は正面から憲法も変えることもできず、96条も変えることもできず、とうとう閣議決定だけでアメリカとの武力行使の道に突き進んでいます。武力行使が限定されているなど幻想に過ぎないのです。
◎解釈改憲は許されない
6月の区議会本会議で区長は憲法解釈について「一般論として時代の変化に即して憲法解釈に変更が生じることもあり得ると考えております。しかし、日本国憲法の3大原則である国民主権、基本的人権の尊重、平和主義については不変のものであり解釈により変えられるものではないと考えます」と述べています。
政府自身も、かつて2004年に「便宜的、意図的な変更は政府の憲法解釈ひいては憲法規範そのものに対する国民の信頼が損なわれかねない」と言明してきました。国民の批判の声に耳も傾けず、国会でのまともな議論もせず、一片の閣議決定で覆すなどということは国民主権の原則を壊す暴挙であり許されないものです。
◎平和を守る地方自治体の責務
地方議会も地方自治体も憲法を守る義務が課せられています。憲法に関わる重大な解釈改憲の動きに対して声をあげるのは地方議会の責務です。
全国では190を超える自治体で、集団的自衛権に関連し「慎重な検討を求める意見書」「集団的自衛権そのものに反対する意見書」「国民の意志を反映することなしに集団的自衛権行使を認めることは許されない」という趣旨の意見書などがあげられています。
板橋区は世界に平和を発信するべく平和都市宣言をおこなっており、また板橋区長は4年前から平和市長会議にも参加しており平和のために活動している自治体です。
◎板橋区の若者を戦場に送ってはならない
板橋区の自衛隊募集によって毎年、約40人の区民が自衛隊に入隊していますが、板橋区民を海外の戦争に送り出すようなことがあってはなりません。
板橋区から政府に対して集団的自衛権の行使容認に反対する声をあげるべきであり、本陳情の採択を求めて私の討論を終わります。