私の一般質問では、「地下水の保全」を取り上げました。
「地下水は貴重な資源」という世論形成を
松崎 前野町に大量の地下水を利用する温泉施設がつくられたことで地下水汲み上げの量的規制と井戸の所有者の既得権との大きな矛盾が表面化しています。
東京都環境確保条例は、地下水の汲み上げを井戸1か所につき日量10トンに規制していますが、問題の施設は、条例施行以前に設置された古い井戸を利用するので、この条例の適用を受けないとして、条例が上限とする水量の30倍もの地下水が汲み上げられ続けています。
そもそも都条例が地下水の汲み上げを規制しているのは、大量の汲み上げによって地盤の沈下や地下水や湧水の減少など、環境に大きな影響を与えることを防止するためであり、住民のみなさんがこの環境確保条例にもとづく汲み上げ量の規制をもとめるのは当然のことです。
「環境」は、世代をこえて住民すべての共通財産ともいえるものです。この「環境」の保全よりも、過去の一時期に得た個人・あるいは企業の「既得権」が優先するとする現在の状況を変えなければ、次の世代に良好な環境を引き継ぐことはできないといっても過言ではありません。
いま実際に、環境保全と経済的権益との問題に直面している板橋区には、他の団体に先んじて、国、東京都、ひいては社会全体に対して、法令や制度、人々の認識の問題をふくめた環境保全のための改革を訴えていく責務があると思います。
いま、板橋区が進めようとしている地下水保全のためのあらたな区条例の制定は、大きな意義があるものであり、条例作りの段階から多くの区民の意見を取り入れて、環境保全の大きな世論形成に寄与することを期待するものです。
同時に私は、「地下水はだれのものか」という問いかけを、環境保全の大きな責任をおっている板橋区からおこなってほしいと思います。
現在の法解釈では、地下水は井戸がある土地の地主の持ちもの=私物とされていますが、これは水は無尽蔵であるとの過去の価値観にもとづくものです。鉱業法で鉱物資源が土地所有権と切り離された公共財として扱われているように、「地下水も貴重な資源」との認識が、国の法体系にも必要ではないでしょうか。この働きかけを区がおこなうべきだと思いますが、見解をお示しください。
条例制定は、地下水保全に一石を投じるもの
区長 環境の問題の地下水のくみ上げの問題でお答えを申し上げます。現在、地下水と湧水を保全する条例案の制定に向けて準備をしておりまして、これは東京の23区でも条例制定というところまで行っているところはないわけですけれども、今、検討しております。できれば9月議会で議員の皆様方にご審議をいただきたいということで、今、策定中でございます。
この条例は、既設の井戸の届け出、あるいは一定規模を超える地下水の利用者に対しましては、井戸の水位とか、あるいは地盤沈下測定などの報告を義務づけておりまして、ただいま申し上げました23区での初めての条例になるのではないかというふうに思っております。この条例が制定されますと、地下水の保全に向けて一石を投じるものであるというふうに思っているところであります。
条例案は、既設の井戸の届け出を義務づけるということをしておりまして、同時に既設の届け出を一定期間中に届け出ないもの、これに対しては、東京都に確保条例というのがございまして、確保条例の新設井戸の扱いとする規定を盛り込みたいというふうに思っております。こうしたことで、地下水と湧水の保全を図っていきたいというふうに思っているところであります。